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恋人にドライオーガズムを伝える

彼女に思い切って言ってみた。
「僕……、お尻が気持ち良いんだ」
ベッドに寝転んでいた僕は彼女の表情を見ることはできず、まるで執行を待つ死刑囚のような気分で彼女のリアクションを待つ羽目になった。
彼女はくすりと笑い、口を開く。
「へぇ、なんだか可愛いね。そういう人も、いるんだ」
もっとずっと恐ろしいリアクションを覚悟していた僕は、その優しい声にひどく安堵した。
彼女の手が僕の腰に回る。それから彼女は、優しく撫で下ろすように、僕のお尻ぺたに手を滑らせた。
「こういうのが、良いの?」

……そう、至ってノーマルである彼女は大いに誤解していたのだ。

ノンフィクションを誇張して贈る、性癖暴露の旅。
い十郎とその恋人お澄は葛藤しつつも歩み寄り続ける。

人は――分かり合えるのか!



もし世界に二人しかいなかったら、死姦趣味だって露出性癖だって自傷すらも変態にはなり得ない。だって、世界の半分の人間がその趣味に染まっているのだから。
ベッドの上にいる恋人に「変態だ」と言ってしまえる人がいるのなら、その人はきっと、ベッドの上を二人の世界だと思えてないんだろう。
二人の間にある問題は、相手の趣味を理解できるかできないかだけで、それが普通かどうかは埒外だ。埒外で良い。埒外じゃなきゃいけない。

少し時系列を整理するために、どうでも良い話をしないとならない。僕らが置かれた状況を理解してもらうためだ。少しだけ我慢して欲しい。
僕ことい十郎には恋人がいた。仮にお澄としよう。僕らの付き合いは長くて、出会ってから今まで、もう6年近くになる。いろいろあって二人は今から2年前に別れた。そうしてやがて、つい最近になるが、元の鞘に収まることになる。
そのエピソードは惚気にしかならないので割愛しよう。本当はとても語りたいが、下らない惚気に嫌気を示してここで読むのをやめてしまう読者の方と両天秤に掛けて、泣く泣く割愛したことをご理解いただけると嬉しい。
閑話休題。
い十郎がドライオーガズムの研鑽に目覚めたのは、ちょうど2年ばかり前になる。お澄と別れた時期と一致するのは、何も偶然などではない。
忘れられないがために、独りで生きる道を模索したまでだ。
……格好良いことを言っているが、オナニーの話だ。お忘れなきよう。

お澄のスペックを、差し支えない範囲で晒そう。
い十郎と同い年で同高校出身。早いものでお互いもうアラサーだ。
彼女は安定した職に就いている。そしてどうやら、安定した職場には安定した人間が集まる性質があるらしく、お澄の職場にはごくごく常識的な、悪く言えば思考停止した価値観しか持たない人間ばかりがいる。
朱に交われば赤くなると言う。
お澄はそんな職場で、ごく当たり前に大人になった。
彼女にとってセックスとは、裸で抱き合ってキスをして、それからペニスをヴァギナに挿入するものである。前者が愛を確かめるため、後者が子供を得るための行為。セックスとは、それら二つの目的を果たす手段である。

……お笑い種だ、などとは思わない。
いや間違えた。思っても言わない。

ようやく本題に入れそうだ。
い十郎はそういう人を彼女に持った。愛しているし、愛されていると感じる。
けれどドライオーガズムのことをおいそれと言うわけにはいかないし、言わないのなら嘘を吐くしかない。
そして嘘はいつか綻び、なおも隠そうとすればやがて疑いを生む。見えない怪物は大きく思えるものだ。
一般論じゃない。経験則だ。……何の経験かって?
「なんかさ、い十郎、すっごく……その、エ、エッチになってない?」
そう、言われたのだ。

膣に指を入れると痛がる人だった。力の抜き方なんて分からないと言う人だった。
2年前の僕には、そう言われてもどうして良いか分からなかったのだ。だって、僕には膣がないから。
だが、ここ2年で僕はその膣に似た物を手に入れていた。
慣れていなければお尻から力を抜くことなんてできない。異物が入って来ると括約筋は反射的に締まり、締まると壁面が引き攣れてとても痛い。できることは、何度も何度も周りをマッサージしてから入れることと、無理に押し込まないで、受け入れるのを待つこと。
僕はただ、彼女の膣に対して同じコツを適用しただけだった。
痛みなく僕の指を受け入れた彼女は、内壁を擦られていつになく気持ち良さそうな声を上げて鳴いていた。
「2年前まではこうじゃなかった。……なんか、上手くなってる?」
シャワーを浴びたあと、お澄はベッドの上で裸のまま膝を抱えてそう言った。
別れていたのだから、その間何があっても別に疚しいことはない。実際、少し付き合ってみた人もいたし、彼女も付き合った人がいると言っていた。
「…………」
僕を見上げる彼女の目は、この2年間に何があったのか、聞きたいような聞きたくないような、複雑な感情を雄弁に語っている。
さて、困った。
彼女が想像して恐れているような淫らな生活を送っていたわけではない。
僕はむしろ……彼女が想像もしていないような淫らな生活を送っていたのだ。
嘘を吐きたくはない。けれど……、引かれて警戒されるくらいなら、嘘吐きの方がまだマシなのだ。
……こんなもの、どう説明しろというのだ!!
そんな大混乱もあって、僕の最初の発言がある。

理解し合えなくて何が恋人か。
そう、思っていた。
いつだって彼女が一般的で、いつだって僕が特殊だった。
僕は何度も彼女に僕のことについて説明し、そのたびに彼女は疲れた顔をした。
別れた時も、きっとお腹いっぱいの彼女に僕がスプーンを持ってさぁ口を開けなさいと迫っていたからなのだろう。
さぁ口を開けなさい。僕を理解しなさい。繋がり合いましょう。
けれどそれは、きっと引き攣れて痛いことなのだ。一般性を持ち合わせない僕には理解出来ないことだったけれど。
良くマッサージして、嫌がったらスプーンを下ろして、口を開けるまで待たなければならない。良く噛んで飲み込む時間は、大切なのだ。

お澄は、女性のオーガズムのことすら知らなかった。
二人でいくつかのページを巡った。
「ちょっと、いやだ……」
クリトリスやGスポットの図解を見ながら、それらの用語すら知らなかった彼女はそう言って口元を覆った。
「女の子の絶頂は、男の子の射精よりずっと気持ち良いと言われてる。両方試した人はいないから、真偽は知らないけどね」
「男の子にも、精通前には女の子と似た絶頂がある」
「大人になってからも、その精子の出ない絶頂に至れる方法があって、僕はそれに興味がある」
いくつかのことを言った。それほど、掘り下げたことは言えなかった。
「真面目な話なんだ。僕はこれに、人生を賭けても良いかもしれないと思っている」
それを伝えたら、彼女は茶化さず聞いてくれた。

お澄の資質も問題になると思う。彼女は、真剣に人の話を聞く天才だ。これほどまでに真面目に人と向き合える人を僕は知らない。
良い女でしょう?
……わわわ、すみません。読むのを止めないで!
とにかく、けれどそんな彼女をしても、あまりに衝撃的なことを一度には飲み込めない。
今、彼女は最初の一口を咀嚼してくれている。
僕はそれを待とうと思う。飲み込んで、再び口を開けてくれるまで。
僕が美味しいと思うものを彼女が一生懸命噛み締めているのを見ながら待っているのは、とてもとても幸せな時間だと気が付いた。

少しずつ隠していたことを語るよと伝えたベッドの上は、前よりずっと二人だけの世界に近かった。

……はっはー、書き切ってみたらどう見てもこれ、大いなる惚気じゃねぇか!
大変お見苦しいものをお見せいたしました。

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まとめ【恋人にドライオーガズ】

彼女に思い切って言ってみた。「僕……、お尻が気持ち良いんだ」ベッドに寝転んでいた僕は彼女の表情を見

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羨ましいのろけ話を読んで上げたので、エネマグラ妄想小説第二弾お願いします

No title

い十郎さんはじめまして。自分は20歳の♂でドライを目指す者です。
最近エネマグラ(詳しくはアネロスSGX)を購入し、解説サイトなどを見てアナニーをしています。
といってもまだ指で数えられるほどしかしていませんが(笑)
今はまだ駆け出しでドライの扉の前にすら立っていない状況なので、「やりたくなった日にすぐドライ!」とはいかなくとも、前立腺の場所を感覚でわかるようにとか前立腺の快感をわずかにでも拾えるようになりたいと思っています。

とても興味深かったので記事全て読ませてもらいました。
どこか詩的な響きのある綺麗な流れのある文章で読みやすくてちょっと感動しました。恋人さんの事が書かれた記事いいですね。心が温かくなりました。恋人でもあり、きっとソウルメイトなのでしょうね。
『そもそも我慢がきかねぇんだよ!』とか笑いながら共感してしまいました

さて、色々駄文を連ねてしまいましたが、い十郎さんの教えてくれたコツの脱力と呼吸を意識しながらこれからやっていこうと思います。暇があれば更新していただけると嬉しいです。
Twitterなどやっておられましたら是非おしえてくださいね。

No title

もちろんソウルメイトですともっ!(どやぁ
文章、読みやすかったでしょうか。
本当に理屈っぽい文章を書く自覚があったので、そう言っていただけると安心します。
・・・安心する反面、「この人も同類(理屈っぽ同盟)かっ!?」と勘ぐったりもします。
し、詩的っ!? あらいやですわおほほ・・・←言われなれない賛辞に言動が貴婦人化(キフジナイズ)する

珍しく即レスしたのは褒められて有頂天になるためではありませんでした。
twitterやってます。ijurowで検索すると出ます。
仰られてから初めて、twitterからこっちへのリンクはあってもこっちからtwitterへのリンクって作ってないなぁと気付きました。
ありがとうございます。

No title

即レスありがとうございました!

No title

そういえばお聞きしたいことが。
い十郎さんはドライに到達されるまで1プレイで大体どのくらいの時間かけてましたか?
あとあんまり意識を取られてしまうようだったら締め付けとか呼吸とか気にせず脱力だけでも大丈夫でしょうか?
そして最後に妄想をするなど興奮することは必須でしょうか?
自分の場合ドライのために興奮をするんだ・妄想をしなくちゃという風な雑念が入ってしまうんですよね。
色々聞いてしまって申し訳ありません。

No title

> 自分の場合ドライのために興奮をするんだ・妄想をしなくちゃという風な雑念が入ってしまうんですよね。

分かります。すごーく分かります!
後から分かることとして言えるのは、エッチな妄想しながらイくと気持ちが良いです。ということ。
でも、妄想をしたからイった、という経験はあまりないですね。

締め付け、は未だに僕も良く分かりません。一番気持ち良い場所を口で説明しようと思ったら「お尻にちょっとだけ力を入れた感じ」になると思うのですが、書いてる人も本当にその締め付け感を意識しているかどうかは疑問ですよ。
気持ち良いところがあったらそこでキープ。そのために少なくともキープできるくらいはPC筋の筋トレ。ってとこですかねぇ?

呼吸に関しては、意識をおすすめします。むしろ呼吸に完全に集中しちゃうくらいの方が脱力には向いてると思います。呼吸じゃなくてもお尻の違和感でも、天井の染みでも、なんでも良いですけどね。
ただ、深い呼吸ってやっぱりエネが動くんですよ。快感が来なくても一日分ちゃんと開発が進む。そのうちそれが実感できるようになると、「今日はイけなくても良いから前立腺の開発だけしよう」って思えてくる。そう思えると、いつの間にかドライにたどり着く。そんな印象です。

何かのヒントになれば幸いです。

No title

丁寧に答えていただいてありがとうございます。とても参考になりました。
これから呼吸を大切にしながらトレーニング頑張りたいと思います!
プロフィール

い十郎

Author:い十郎
エネマグラを愛するアナニスト。ドライオーガズム一年生。さらなる快感探求中の普通の男子。

ついでに電気系の学生。水系に強くじめんが天敵。
横好きで小説や絵なんかも書く。

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